2016年07月15日
皮は裂け、肉は飛び散り、赤い液体が・・・
またまた、近所の牧場で仕事をしていたときの話。
前に書いたようにそこは観光牧場なので、僕は見学の修学旅行生や遠足の生徒達、一般のお客さんにバター作りやウィンナー作り、レザークラフト、木工、簡単な陶芸やその絵付けなどを体験させる講師のような仕事をしていた。
そのなかでウィンナー作りが一番大変だった…
ウィンナー作りは少し難しいので小学生以上のお客さん数人程度が対象だったが、その日はある幼稚園の園児十数人にウィンナー作りを教えなければならなかった。
豚モモの挽き肉250グラム、香辛料、羊の腸の皮、ケチャップ、マスタード、ボウル、肉を搾り出すグリースガンのような器具、その他諸々を人数分準備し子供達が来るのを待っていた。
しばらくして先生や保護者数人に引率されて子供達がワラワラと入ってきた。
各自手を洗わせ、さらに手に消毒用アルコール吹き付け、テーブルにつかせようとするが騒がしく落ち着きのないガキ… いや子供達は統制のとれていないゲリラ集団の如くなかなか思うよに動いてくれない。なんとか先生方に協力してもらってようやく席につかせた。
「先生、ちゃんとシツケろよ」と思った。
やっと皆が揃った所でウィンナー作りを始めた。
「みなさぁぁ~ん、こんにちゎぁぁぁ~」
挨拶をする私に対してバラバラに挨拶をするガキ共… いや子供達。
私は自分の耳に手を添え
「きこえないぞぉぉ、もーいちどげんきよくぅ、こ・ん・に・ち・わあぁー!」
気分はNHK教育テレビのお兄さんである。
「いまから、おにーさんがうぃんなぁのつくりかたをおしえま~す。おいしいうぃんなぁをつくってくださいねぇー。でわでわ、はじめまあす」
子供に迎合する自分。某部隊の後輩には絶対見せたくない姿だ。しかもその時、中年ど真ん中なのに調子ぶっこいて自分のことを「おにいさん」とか言ってる自分もイタかった。
ウィンナー作りを簡単に説明すると
まず挽き肉に香辛料を入れて捏ねまくります。
次に捏ね終わった挽き肉をグリースガンみたいな器具に詰めます。
グリースガンの先っちょに羊の腸の皮を全部かぶせます。
そして、引き金で肉を押し出して腸の皮につめていきます。
んで、詰め終わったら5、60センチ位になるので10センチほどにひねってねじります。
それを80度のお湯で20分茹でて出来あがり~~。
だが しかし
だがしかし、統制のとれていないガ… 子供達にそれを教えるのは至難の技だった。
実際始めてみると、響きわたる悲鳴に似た奇声、皮が裂け肉片が飛び散り壁に張り付き、ドロリとした赤い液体が滴り落ちる←ケチャップ
そこは、エド・ゲインやハンニバル・レクターも裸足で逃げ出すような凄惨な現場になった。鼻ほじりながら肉をこねているガ… 子供もいたし…
それでもウィンナーだか肉団子だかツクネだか不明だが先生や保護者の協力もあり何とかカタチはできた。
あとは茹でるだけだった。子供達は茹で上がるのをワクワクしながら待っている。
そして茹であがって大皿に盛られたウィンナー(?)を見て子供達はワァーと声をあげた。
「さあ、できましたよぉ、どうぞたべてくださいねー」
盛られた皿に一斉に子供達の手が伸びる。子供達は皆おいしいおいしいと言いながら食べている。
無邪気にはしゃぐ子供達の姿を見て私は
「生まれて数年、この子達は自分らで物を作って食べるなんてことはおそらく初めてのことだろう。これをキッカケにこれからもこの子達は物作りの素晴らしさ楽しさをわかってもらえたらいいな」
なんて柄にも無いことを考えていた。
その時、ひとりの女の子が私に近づいて来てウィンナーを差し出した。
「はい」
「う″…」
どうやら私に食べてもらいたいらしいのだが…
女の子はキラキラした目で私を見つめていた。先ほど鼻をホジっていたガキ… いや子供もキラキラした目で私を見つめている。意を決して一口食べた。
「お、お、おいしいよ… うんうんとってもおいしいよ」
「わあぁーっ!」っと喜ぶ子供達。
ベドウィン族にラクダの肝を勧められたアラビアのロレンスの気持ちが分かったような気がした。
はい、おしまい。
Posted by 眠月 at 06:06│Comments(0)
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